J-SRI研究会で「宍塚・谷津田でのSRI栽培について
(第二報)」を報告しました
SRIとは“the System of Rice Intensification”の略で、日本語では「稲作強化法」と呼ばれています。30数年前にマダガスカルで開発された、①乳苗移植、②疎植1本植え、③間断灌漑を組み合わせた新しい稲作法です。環境への負荷を減らし、イネの潜在能力を発揮させて少ない投入量(肥料、用水、種もみ等)で多収量が見込める持続可能な農法として、アジア、アフリカ、中南米を中心に今では50を超える国々に導入されています。日本では8年前に試験栽培が始まり、日本の気候風土に合ったSRIの確立を目指して研究開発が進められています。
J-SRI研究会は、8年前に、日本型SRIの発展・普及のための、また特に東南アジアでのSRI支援のための情報交換の場として設立され、2か月に1回のペースで東京大学農学部において、研究者・大学院生・農家・NPO活動家・一般市民等が集まって開かれ、活発な議論が行われています(JはJapanの略)。
自然農田んぼ塾では、里山に棲む多種多様な生きものとイネとの共生を目指して、6年前から川口式自然農に取り組んできました。そして、この自然農をSRIに適用することによって新たな可能性が開けるのではないか、すなわち、イネが持つ潜在能力をフルに発揮させるSRIの手法をとり入れることによって自然農が更に進化するのではないか、と考え、2015年に試験的にSRI栽培を実施しました。その結果、SRIのほうが非SRIに比べて反収が1.2倍増加し、8.5俵/反というこれまでで最高の収量を上げることができ、2015年12月のJ-SRI研究会でその結果を報告しました。
※2015年12月第一回報告
2016年は、更に圃場を一つ増やし、二つの圃場でSRI栽培を実施しました。その経過と結果を今回、第二報として12月7日のJ-SRI研究会で報告しました。出席者は20名と盛況で、資料をもとに20分説明し、そのあと約25分の質疑応答がありました。今年は春先から夏場にかけての低温・日照不足という天候不順にイネの生育が大きな影響を受けましたが、乳苗移植のSRIに比べて成苗移植の非SRIの方がその影響が大きかったため、SRIと非SRIの反収比が昨年の1.2倍から1.5倍に大きくなったこと、また、今年のSRIは昨年のSRIに比べて、天候不順の影響やノウサギによると思われる食害、稲麹カビの付着等により、反収が40%減少したことを報告しました。さらに2017年の計画として、間断灌漑によるイネの成長促進効果が、圃場の肥沃度やイネの品種(うるち米ともち米)によってどのように違うのかを調べる予定であること、を話しました。
自然農をSRIに適用した例がこれまでになかったためか、質問は報告内容そのものよりも、生きものの活動を妨げないよう不耕起にするとか、草マルチで雑草を抑え、全面に水を張らず所々に溝を切って水分を供給する、といった私たちの自然農のやり方に集中しました。それに対して、私たちの自然農は、移植したあとの乳苗が健全に成長するのに好適な環境をつくる点でも、またその後のイネの成長促進のための間断灌漑を効果的に実施できる点でも、SRI栽培に大きなメリットがあること、を強調しました。
今後、自然農田んぼ塾として自然農によるSRI栽培を継続し、いつの日か「自然農SRI」を確立して世の中に広めていければ、と考えています。
自然農田んぼ塾 逢坂
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