2015年12月15日火曜日

2015年度第4回J-SRI研究会で「宍塚里山の谷津田でのSRI栽培実験について」報告

 去る12月15日に東京大学農学部で開かれた2015年度第4回J-SRI研究会において、「宍塚里山の谷津田でのSRI栽培実験について」と題して報告しました。

 SRIに関しては、下記資料を参照してください。
by 逢坂福信

【J-SRI研究会に参加した自然農田んぼ塾メンバーの感想】
 SRIとは、 the System Of Rice Intennsification (稲作強化法)すなわち増収策のことです。J-SRI研究会は、東大農学部、明治大学農学部など各大学教授,院生、アジア諸国の留学生、関心ある一般人が集い、SRIに関して行うシンポジウムです。
 今回、逢坂さんが「宍塚里山の谷津田でのSRI栽培実験」の演題で報告を行い、SRIの実験成果を宍塚里山の紹介を含めて、① 自然農による実験結果であること、② 20%の増収があったこと、③ 乳苗を移植したこと、④ 間断灌漑の実際を紹介したこと、⑤ 来年も再現性を調べるために実験を行うことなど非常に分かりやすく説明していました。
 他のSRI実験報告では我が国のような温帯地帯では必ずしも増収をもたらさないと結論づけたものもあり、注目を集めていました。
 私の田圃では草に負けて実験結果を得ることができませんでしたが、逢坂さんの成果・熱意に触発されて来年もう一度チャレンジしたいと思っています。(伊藤孝男さん)

 初めてJ-SRI研究会に参加して、稲作技術の普及に取り組む方々の熱心な議論にびっくりっぽんの連続でした。
 SRIは元々日本にあった乳苗、疎植、間断灌漑技術だが、現在の日本ではあまり普及していないこと(収量を上げる必要がないため)
 タイ、インドネシア、カンボジアなどSRIの普及している村では、熱心なリーダーの存在が欠かせないこと
  自然農(川口式)とSRIの組み合わせは、世界でも例がなく皆さん興味深く、宍塚の圃場見学(6月) を希望されたこと
 SRIの日本語訳について「稲作強化法」「エスアールアイ」など議論がありました。私としては、テロ組織「IS」と間違われやすいので「稲作強化法」がいいと思いました。(菊地敏夫さん)


※J-SRI研究会HomePage(Japan Association of the System of Rice Intensification)は以下


2015年11月28日土曜日

2015年11月28日 会議

自然農田んぼ塾議事録

日 時:2015年11月28日(土)14:00~16:30 
場 所:里山情報館
出席者:9名

1.稲刈り、脱穀・唐箕・もみすりの実施状況について
  田んぼの学校の稲刈り(10/10)から始まり、自然農田んぼ塾の稲刈り(11/12)まで
  朝紫・まんげつもちの脱穀・唐箕・もみすりまで実施済


  • I氏より「今年はウサギに稲をかじられ、20%の収量減となった。」
  • 私の田んぼでもイノシシに荒らされた。宍塚では、鳥やウサギ、イノシシなどの被害は見当たらない。案山子の効果か、オオタカを頂点とするバランスのとれた里山の成せる技か。


2.SRIイネと非SRIイネ、直播イネと移植イネの稲株の比較および反収比の推定について
 SRIイネと、非SRIイネの違いは、写真の通り一目瞭然。サンプルは1例で田んぼの端から採取。SRIイネに比べ、直播イネは根の張りが狭く、窮屈そうであった。来年は、直播イネの改善を図る。
 9月の資料で、反収の計算式を提案したがサンプリングの仕方で推定結果が大きく変わるため、この計算法は使わず、はざがけの長さと面積比から反収を推定。それによるとSRIイネが非SRIイネの18%増、直播3cm間隔が移植イネの18%増になった。
 いずれも12月中旬に実測の反収が決まるので推定の妥当性が判定される。




3.2016年の作付け最終案
 朝紫からおくのむらさきに変更する。(田んぼの学校、自然農田んぼD,E)
 まんげつもちからはまかおりに替える(田んぼC、A1-1)
 田んぼの学校80m²はまんげつもちにする。


4.2016年の種もみ準備量
  まんげつもち栽培面積180m²から260m²に変更
  おくのむらさき栽培面積230m²から150m²に変更


5.放射能測定(福島、飯館村、大熊町)
 M氏と同行し、車内から空間線量を測定する。大熊町では途中通行止め
 無人の家が目立つ。飯館村の田んぼも表土は削られ、路肩に除染された土などがシートに包まれ積まれていた。4年前と比べると1桁線量は下がっていた。

6.國井孝昭さんプロフィール
 NPO円農あたい理事長。来年、田んぼの学校の隣で川口式自然農によるトヨサトとはまかおりを作付けする。つるぐみ農園、ふれあい農園でも自然農による野菜づくりを都会の人と行う。

7.I氏の自然農畑見学を12月20日(日)に実施

8.田んぼの学校のかかし送り(12/5)、ならせもち(1/11)

9.今後、米の出納管理をKが行う。

 次回の自然農田んぼ塾の会議+勉強会は、1月16日(土)14時から
 勉強会のテーマは、(1) N氏「家庭用生ごみ処理プラント」、(2) U氏「麹のつくり方」

自然農田んぼ塾事務局 K


2015年9月26日土曜日

2015.09.26(土) 会議

自然農田んぼ塾会議議事録

1.日時 : 2015年9月26日(土)14:00~17:00
2.場所 : 里山情報館
3.出席者 : 11名
4.議事の概要
(1) イネの生育曲線の2011年および20132015年の比較
(2) 稲刈り、脱穀・唐箕・もみすりのスケジュール案
(3) 「朝紫」から「おくのむらさき」への紫黒米の転換について(提案)
(4) 2015年の予想収穫量と2016年の作付案
(5) SRI栽培と非SRI栽培、および直播き栽培と移植栽培の反当り収量比の推定法について(提案)
5.議事の経過
(1)  2015年のイネの生育曲線によると、総じて2014年から回復傾向にある。これは、2015年は雑草対策(とくにヒエ対策)に注力したことが主因と考えられる。



(2)  スケジュール案の再確認

(3) 「おくのむらさき」への転換を決定。「朝紫」はモミが残ることと収量が低いことが欠点。


(4) 2016年は、①SRI実験用圃場を広げる、②付加価値の高いかおり米(はまかおり)の増産を目指す。

(5) 各収穫比の推定法の解説。SRIイネと非SRIイネの生育や収量を詳細に比較するために,収量を構成する要素の,面積あたりの株数,1株あたりの穂数,1穂あたりのモミ数,モミの登熟歩合,登熟モミ1粒あたりの重量,登熟モミに対する玄米重量比,を計測する。各収量構成要素は,イネの生育と関係があるため,劣っている要素を把握することにより,どの生育時期に課題があるのかを推察することが可能となる。



6.その他
 Mi塾長へ質問
(1) Iさんからの田んぼにおける各種雑草への対応について
 Iさんが川口式自然農法で耕作している水田で問題となっている雑草について解説。湿生雑草よりも乾生雑草が多いことから,畦畔からの雑草の侵入に気を付けること,できれば湛水期間を確保すること,田植え前に刈り敷く草の量を増やして,敷草による雑草抑制効果を高めること,などをコメントした。
(2) Uさんから畑における雑草一般への対応について
 Uさんが管理している3反ほどの畑の植生管理の方策について議論。通路部を広くとって刈り払い機による管理をしやすくする,雑草植生をうまく利用して,粗放管理にマッチする作物を植えていく,管理できる面積から徐々に耕作面積を増やしていく,果樹などの永年生作物を導入,などのコメントがでた。
自然農田んぼ塾生 U


2015年7月18日土曜日

2015.07.18 会議及び勉強会報告

自然農田んぼ塾会議&勉強会報告
2015/7/18
PM2:00~4:30
参加者:11名
  
1. 田植えに向けた準備作業、田植え、田植え後の状況について
 5月中旬より田植えに向けた準備作業として、イグサの根をのこぎり鎌で切り、凹凸を均平化する為刈り払い機で地面を削りレーキでならし谷津の草を刈り田んぼに敷いた。一部の田んぼを除き、刈草を敷き詰めたが、この作業が後々の草取り作業の省力化につながった。6/13より6/22までのべ人数48名で田植えを実施。田植え後、根が活着するまで水位を上げ、その後間断灌漑を実施。一部の田んぼでイネの食害が見られたが、原因は不明。バッタによる食害か。
2. SRI栽培実験の進捗について(その2)
 6/6、2回目草取り、6/16、開帳型の分げつ始まる。6/26、3回目の草取り、分げつがさらに進み放射型に。草丈65cm、分げつ数15本(トヨサト)、7/6、草丈70~80cm、分げつ20本(トヨサト)、非SRI稲と比較しても違いは歴然。従来の「苗半作」という常識が覆った。

3. 直播き栽培実験の進捗について(その2)
 6/6、草丈32cm、6/16、イネドロオイムシの食害。6/26、分げつ開帳型から放射型に。SRIの稲に比べ茎葉とも細く分げつ10本と少ない。3cm間隔の稲は隣の稲に邪魔され広がらない。

4. イネの生育調査の実施について
 全品種10株の草丈と分げつ数を1か月半の間、1週間ごとに記録し、秋に収穫する生産量と生育過程の相関を調べる。第1回目は7月26日午前9時~参加希望者は田んぼに集合。

5.  勉強会「有機農業公開圃場現地検討会」に参加して~M
 日時:2月27日 場所:金子農場(神栖市)
 特徴:無農薬、無化学肥料の自然農法、MOA自然農法文化事業団に所属。
 作付け面積:米20a、畑作(ナス、トマト、ピーマン、キウイ、ヤーコン他)30a 労働力:本人と両親
 販売先:レストランとの直接取引
 きっかけ:化学農薬全盛期に母親が原因不明の病気に。化学農薬に懸念をもち、以来食事療法にて改善。畑は砂地で松林(防風林)の松葉と米ぬかで堆肥を作り、輪作、コンパニオンプランツなどで害虫を防除。
 M氏自身も八郷で自然農の畑を実践中。
6.  田んぼの学校~Abさんより
 草取り実施、虫の観察会(7/18)、2家族参加。秋の収穫(脱穀、籾摺り)では地元農家の協力を仰ぐ。

次回会議は9月26日(土)PM2:004:00イネの生育調査結果について、稲刈りスケジュールについて、次年度の栽培品種・作付けについて、等。

 自然農田んぼ塾生 K


2015年5月30日土曜日

2015.05.30 会議

自然農田んぼ塾会議議事録
2015/5/30 
 PM2:004:30
参加者17


1.種の発芽率について-2014年度と比較して-
 7品種のうち4品種が昨年度よりダウンしていた。原因としては、種まき位置刻印具が昨年度は手製のもので深さが5mm以内の穴になっていたが、今年度は市販の苗ポットを使用したため、突起部が3cmあり深い穴ができ、種が水没し酸素が充分に供給できなかったことが考えられる。来年度は周囲に木枠を付けて5mm以内の穴に収めることを検討している。 

2.苗の葉身長と葉齢の変化について
 昨年に比べ、葉身長の生育が進んでいる。今年は日照時間が長く気温が高めであるため苗の生育が進んだと考えられる。
  



3.田んぼの草の発生状況
 毎年秋に地力向上のためクローバーの種を蒔いている。5月クローバーが繁茂しイグサを抑える状況が生まれている。イグサがかなり消失しクローバーとスズメノテッポウが競合している。またミミズが増えてきて、有機物の蓄積が進んでいる。田植えまでに刈り草を敷きつめる予定。

4.SRI栽培実験の進捗について
 SRIとはthe System of Rice Intensificationの略で、フランス人によって1983年にマダガスカルで開発された稲作法。乳苗移植と間断灌漑、粗植・一本植えを組み合わせた栽培方法で、反当り収量が20俵前後という多収量が報告されている。
 2品種(トヨサトとハッピーヒル)で実施。順調に生育中。乳苗のため植え付けには神経を使うが、通常の成苗に比べ苗の活着が早く生育も早い。今後5日間程度の周期の間断灌漑で推移を見守る。草取りはこれまでに1回実施。
  

5.直播き栽培実験の進捗について
 2月初めに種を蒔く筋の表土を約10cm幅、深さ1cm削り、水位を上げて水の溜まった所に雑草の種の入らない山砂を敷き平らにし、表面を枯草で覆った。4月21日から4日間で3cm、6cm、12cm間隔の筋蒔きを行った。種蒔き後、覆土し枯草を敷き水位を上げた。
 発芽率は、3cm間隔が65%、6cm間隔が47%、12cm間隔が35%であった。5月21日現在、葉身長16cm、葉齢2.5。今年、整地から種まきまでの期間が2か月間あった為、表面が荒れてしまった。来年は、整地から種まきまでの期間を短縮する。
 

6.田植えの準備作業と田植えスケジュール
 6月6日、7日午前9時から12時、午後1時から4時=田んぼの草を鎌で刈り、野原の刈草を敷く。雑草の根の残っている所は鎌でほぐす。
 6月13日、14日、20日、21日午前9時から12時、午後1時から4時=早生の朝紫、まんげつもちから田植え、その後晩生の6品種を田植え。

田んぼの学校のスケジュール
 6月7日、午前観察会、午後朝紫田植え(奥の田んぼ)
 6月20日、21日 朝紫、まんげつもち田植え、昼さなぶり(田植えを終えたことを慰労する伝統行事)。

7.次回の田んぼ塾会議 7月18日(土)午後2時から。
 勉強会の話題提供は、
  Mさん「有機農業公開ほ場現地検討会に参加して」
  Uさん「My boom」 
自然農田んぼ塾生 K




2015年4月14日火曜日

4/11,12 開講式と種まき

 4月11日(土)午前18名(そのうち新入塾生13名)の出席で開講式、午後13名の参加で種まき、12日(日)午前5名の参加で種まきを行い、予定通り終了しました。写真を添付します。
 種まきは田んぼの学校の生徒延べ71名も参加して一緒に行いました。
開講式で話す及川理事長

種まきをする自然農田んぼ塾のメンバー
 開講式と種まきの詳しい報告は会報「五斗蒔だより」の5月号に掲載することになっています。 掲載記事はこちら

 開講式の配付資料を添付します。

 現在、苗代は溝に水を張り、鳥よけネットと 保温カバーをかけています。写真を添付します。

 手引書の5ページに書きましたが、種に含まれる水分量が種重量の25%に達したときに発芽が始まります。そうなるまでに、種のまわりの地温が10℃の場合10~12日、15℃の場合6~8日、20℃の場合4~5日かかります。このところ低温が続き地温も低いので、発芽まで10日程度かかりそうです。天気の良い日は、保温カバーのすそを開けて外気を入れ、地温が上がり過ぎないようにします。

 次の共同作業は田植えまえの草刈り(6月上旬)です。

添付資料





2015年3月16日月曜日

常陽リビング、トップ記事に「自然農田んぼ塾」

 3/14(土)の常陽リビングの一面に、「草も虫も友とする稲作り」自然農田んぼ塾の紹介が載りました。
 常陽リビングには、観察会や子ども探偵団などのお知らせの掲載をお願いしていますが、その手配をしているのがHoさん。感謝ですね。
(大池メール、hanaさん、独活さん)の記事から

 さて、この記事は、一面記事でしたので、なんと、常陽リビングのHPに3年間もバックナンバーとして記事が掲載されます。常陽リビングさんに感謝!感謝!ですね。

是非、一度覗いてください。

http://www.joyoliving.co.jp/topics/201503/tpc1503018.html



2015年2月18日水曜日

「自然農田んぼ塾」への参加の呼び掛け

「自然農田んぼ塾」への参加を呼びかけます 

認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」

 「宍塚の自然と歴史の会」では、宍塚の里山を保全する活動の一環として15年前に田んぼ塾を立ち上げ、それ以来里山の谷津田でイネ作りを行っています。これまで谷津田でのイネ作りの体験学習に取り組みながら、里山にすむ多種多様な生きものと共存共生するイネ作りを追求してきました。そしてこの方向をさらに進めるため、4年前から不耕起・無農薬・無肥料の自然農を実践しています。その結果、今では、自然農が生物多様性を高め豊かな生態系を形成しつつイネを育てる農法である、との見通しが得られるようになりました。

 そこで「田んぼ塾」を改め、「自然農田んぼ塾」として新たにスタートし、塾生のみなさんと力をあわせて自然農のイネ作りをさらに深めていきたいと考えています。

 自然農は、自然と敵対せず自然との調和を目指します。すなわち草や虫、微生物を敵とするのではなく、これらの生きものの力を活かして作物を育てます。土を耕すと土の中の小動物や微生物の活動が妨げられるため、土を耕さないで生きものたちがじゅうぶん働いてくれるようにします。また農薬や肥料をまいて人間の都合のよいように生態系を改変してしまうと、生物多様性が損なわれ生態系のバランスがくずれて作物が病気にかかりやすくなり、また作物の味が落ち食の安全性も失われます。ですから人間が生態系に対して余計な干渉をせず、多様な生きものが盛んに活動する豊かな生態系ができるよう配慮し、その中で健康でたくましく安全でおいしい作物を育てます。

 今わたしたちが住むかけがえのない地球は、温室効果ガスの増大による温暖化の進行、フロンガスによるオゾン層の破壊、過伐採・過放牧による森林の減少や砂漠の拡大、人工化学物質や重金属による大気・水質・土壌の汚染など、人間活動に由来する様々な危機が年々深刻になっています。

 これらの危機を乗り越え、わたしたちの将来世代を含む地球上のあらゆる生きものが永続的に豊かに幸せに暮らしていけるようになるために何をなすべきか、ともに考え追求する場として「自然農田んぼ塾」への参加を呼びかけます。

<申し込み期限> 2015年3月31日

<申し込み先>  事務局 逢坂(E-mail : ohsaka01@yahoo.co.jp 電話 : 080-5410-3125)
<申し込み方法> 住所・氏名・年齢・Eメールアドレス・電話番号を添えてEメールまたは電話にて

<年間参加費> 一般:5,000円、会員:無料

<年間の農作業スケジュール>
 4月中旬:種まき、
 4月下旬~6月中旬:育苗、
 6月中旬~下旬:田植え、
 7月上旬~末:草刈り、
 7月下旬~9月下旬:イネの生育調査、
 10月下旬~11月上旬:稲刈り・ハザ掛け、
 11月下旬~12月中旬:脱穀・唐箕(とうみ、)・もみすり
  (注)実が入った良いもみを選別すること

<栽培品種>
 早生種:朝紫(黒米)、まんげつもち(もち米)

 晩生種:トヨサト(うるち米)、はまかおり(香り米)、紅染めもち(べにそめもち・赤米)、神丹穂(かんにほ・赤米)、緑もち(緑米)



「自然農イネ栽培の手引き」(第1版)を制定

「自然農イネ栽培の手引き」(第1版)を制定しました

「自然農田んぼ塾」事務局

 「五斗蒔だより」2015年2月号の4ページに記載のとおり、これまで15年間続いた「田んぼ塾」は「自然農田んぼ塾」として新たにスタートすることになりました。
 その目的は、宍塚里山の谷津田でこの4年間実践してきた自然農イネ栽培の取組みを、より幅広い人々の力を結集してさらに深め発展させていくことにあります。


 「自然農田んぼ塾」のスタートに合わせて、このたび「非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き」(第1版)を制定しました。(以下、「手引き」と称します。)これは、1年かけて事務局が案をまとめ、田んぼ塾会議で検討のうえ作成したものです。この「手引き」は、第1版と銘うっているとおり宍塚の谷津田での自然農イネ栽培を推進していくための跳躍台の役割を果たすものであり、今後1年1年自然農イネ栽培の経験を重ねていく中で「自然農田んぼ塾」に結集するメンバーの創意工夫によりさらに質の高い使いやすいものにしていくことをねらっています。

 「手引き」の内容を紹介するまえに、私たちが実践している自然農イネ栽培の基本原則について述べます。

  1. 土を耕さない(不耕起) なぜ耕さないかというと耕す必要がないからです。耕していない森や林の土は柔らかくフカフカしています。毎年毎年土の上に木々の落葉落枝が積み重なり、それらの有機物を糧にして生きる小動物や微生物の働きで最終的に無機物にまで分解され、それを植物が吸収して成長する、という循環が繰り返され、肥沃な土壌が形成されます。耕さなければ自ずから植物が健全に育つ生きものの舞台が出来上がります。森や林のような自然界にできるだけ近い環境でイネを栽培することを自然農は目指しています。
  2. 肥料・農薬を用いない(無肥料・無農薬): 自然農では土壌中の生きものの働きによって植物が成長するのに必要な栄養素が作られるので、外部から肥料を投入する必要がありません。ところが土を耕すと、生きものが十分活動できなくなり肥沃な土壌が形成されなくなるため、肥料を入れる必要が出てきます。そして生きものの働きが低下するとともに生きものの間の「食う食われる」という関係のバランスが崩れると、作物に病虫害が発生しやすくなります。そのため農薬をまいて害虫や病原菌を殺すことになります。農薬を使うようになると、害虫の天敵である益虫や病原菌を食べていた生きものまで殺してしまうので害虫や病原菌が異常繁殖したり、農薬の効き目がなくなってきて更に強力な農薬を使わないといけなくなるという悪循環に陥ります。自然農では、そもそもこういう悪循環は起こりません。
  3. 草や虫・微生物を敵とせず、生きものの力を活かす: 自然農の田んぼでは、イネとイネ以外の生きものは敵対関係でなく共生関係にあります。もちろんイネが草の勢いに負けそうな場合は草の生長を抑えますが、必要以上に刈る必要はありません。イネのまわりに草々があることで風雨や暑さ寒さや乾燥から守られたり虫害から守られたりします。また刈った草はその場に寝かせます。土を裸にせず、太陽の日差しにさらさないことから乾燥から守られると同時に、虫や微生物の営みが活発となり肥沃な土壌ができあがります。また多様な生きものがつくりあげる生態系の精巧なバランスを保つことによって病虫害がほとんど発生しない健全なイネが育ちます。
  4. 田んぼ全面に水を張らない(非湛水): 私たちの自然農の田んぼでは、所々に切ってある溝にだけ水を入れてイネを栽培する領域は水を張らず湿った状態を保ちます。こうすることによって、湛水する場合に比べて田んぼの生きものがはるかに多様になります。というのは水生と陸生の両方の動植物、そして好気性と嫌気性の両方の微生物が活動できるためです。こうして多様な生きものとともにイネは健康でたくましく育ちます。また必要とする水の量がはるかに少なくてすみ、水資源の節約になり夏場の水不足の影響を小さくできます。他に、非湛水とすることによって、地中に酸素が入るので根が強くなる、また温暖化係数が二酸化炭素の28倍という強力な温室効果をもつメタンガスの発生が大幅に減る、というメリットがあります。

 次に「手引き」の概要を説明します。 

[1]の『本手引き作成の目的』では、「川口由一氏が30数年の実践を通して作り上げた自然農イネ栽培法は、人類が多様な生きものと共存共生して持続的に生きていくためになくてはならない農法であり、一人でも多くの人々がこの農法に取り組むために必要な具体的な情報を提供することを目的とする」と謳っています。

[2]の『非湛水型不耕起イネ栽培のための田んぼ作りについて』では、具体的な田んぼの作り方・構造、そしてこの農法で重要な役割を果たす有機物たい積層および溝の働きについて述べています。

[3]の『不耕起自然農イネ栽培の湛水型に比べて非湛水型が優れている点』では、湛水型の不耕起イネ栽培に比べて、非湛水の本方式のほうが

  1. より多様な生きものが棲息できる、
  2. 気候変動に対して抵抗力がある、
  3. 水資源が節約できる、
  4. 作業性が向上する、

という4点で優れていることを挙げています。

[4]の『非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手順・方法』では、

  1. 苗代作り、
  2. 種まきに向けた準備、
  3. 種まきおよび種まき後の処置、
  4. 発芽までの処置、
  5. 育苗、
  6. 田植えに向けた準備、
  7. 田植え、
  8. 田植え後の欠株補植・浮き苗補正、
  9. 田植え後の抑草、
  10. 出穂期前後(穂ばらみ期から穂ぞろい期の間)およびその後の水位調節、
  11. イネの生育調査、
  12. 田んぼへの水流入停止、田んぼからの落水、
  13. 1株当り平均有効分げつ数、1穂当り平均モミ数、登熟歩合の計数・記録、
  14. 自家採取種モミに必要な稲株の確保、
  15. 稲刈り、ハザかけ、雨よけ用ビニールカバーかけ、
  16. 脱穀、唐箕(とうみ)、モミすり、稲わらの田んぼへの還元、
  17. 反当り収量を決める構成要素についての考察、
  18. 自家採取種モミ用稲株の刈取り、天日干し、脱穀、モミの調整、

という18項目にわたる作業の目的・手順・方法などを時系列的に述べています。
 ここでは、経験や勘といった記憶や感覚に頼るのではなく、イネの生育過程および結果をなるべくデータとして記録に残しそれに基づいて判断する、という姿勢で書いています。


[5]の『年間の作業スケジュール』では、3月から12月までの作業内容をタイム・テーブルにまとめています。

 最後に、「手引き」の作成にあたって参考にした文献をあげています。

 手引きについては、以下をクリックして、ファイルを開いてください。 

非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き」(第1版)




非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き ( 第1版 )

 非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き(第1版)については、以下をクリックしてファイルを開いてください。

非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き(第1版)