2015年2月18日水曜日

「自然農田んぼ塾」への参加の呼び掛け

「自然農田んぼ塾」への参加を呼びかけます 

認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」

 「宍塚の自然と歴史の会」では、宍塚の里山を保全する活動の一環として15年前に田んぼ塾を立ち上げ、それ以来里山の谷津田でイネ作りを行っています。これまで谷津田でのイネ作りの体験学習に取り組みながら、里山にすむ多種多様な生きものと共存共生するイネ作りを追求してきました。そしてこの方向をさらに進めるため、4年前から不耕起・無農薬・無肥料の自然農を実践しています。その結果、今では、自然農が生物多様性を高め豊かな生態系を形成しつつイネを育てる農法である、との見通しが得られるようになりました。

 そこで「田んぼ塾」を改め、「自然農田んぼ塾」として新たにスタートし、塾生のみなさんと力をあわせて自然農のイネ作りをさらに深めていきたいと考えています。

 自然農は、自然と敵対せず自然との調和を目指します。すなわち草や虫、微生物を敵とするのではなく、これらの生きものの力を活かして作物を育てます。土を耕すと土の中の小動物や微生物の活動が妨げられるため、土を耕さないで生きものたちがじゅうぶん働いてくれるようにします。また農薬や肥料をまいて人間の都合のよいように生態系を改変してしまうと、生物多様性が損なわれ生態系のバランスがくずれて作物が病気にかかりやすくなり、また作物の味が落ち食の安全性も失われます。ですから人間が生態系に対して余計な干渉をせず、多様な生きものが盛んに活動する豊かな生態系ができるよう配慮し、その中で健康でたくましく安全でおいしい作物を育てます。

 今わたしたちが住むかけがえのない地球は、温室効果ガスの増大による温暖化の進行、フロンガスによるオゾン層の破壊、過伐採・過放牧による森林の減少や砂漠の拡大、人工化学物質や重金属による大気・水質・土壌の汚染など、人間活動に由来する様々な危機が年々深刻になっています。

 これらの危機を乗り越え、わたしたちの将来世代を含む地球上のあらゆる生きものが永続的に豊かに幸せに暮らしていけるようになるために何をなすべきか、ともに考え追求する場として「自然農田んぼ塾」への参加を呼びかけます。

<申し込み期限> 2015年3月31日

<申し込み先>  事務局 逢坂(E-mail : ohsaka01@yahoo.co.jp 電話 : 080-5410-3125)
<申し込み方法> 住所・氏名・年齢・Eメールアドレス・電話番号を添えてEメールまたは電話にて

<年間参加費> 一般:5,000円、会員:無料

<年間の農作業スケジュール>
 4月中旬:種まき、
 4月下旬~6月中旬:育苗、
 6月中旬~下旬:田植え、
 7月上旬~末:草刈り、
 7月下旬~9月下旬:イネの生育調査、
 10月下旬~11月上旬:稲刈り・ハザ掛け、
 11月下旬~12月中旬:脱穀・唐箕(とうみ、)・もみすり
  (注)実が入った良いもみを選別すること

<栽培品種>
 早生種:朝紫(黒米)、まんげつもち(もち米)

 晩生種:トヨサト(うるち米)、はまかおり(香り米)、紅染めもち(べにそめもち・赤米)、神丹穂(かんにほ・赤米)、緑もち(緑米)



「自然農イネ栽培の手引き」(第1版)を制定

「自然農イネ栽培の手引き」(第1版)を制定しました

「自然農田んぼ塾」事務局

 「五斗蒔だより」2015年2月号の4ページに記載のとおり、これまで15年間続いた「田んぼ塾」は「自然農田んぼ塾」として新たにスタートすることになりました。
 その目的は、宍塚里山の谷津田でこの4年間実践してきた自然農イネ栽培の取組みを、より幅広い人々の力を結集してさらに深め発展させていくことにあります。


 「自然農田んぼ塾」のスタートに合わせて、このたび「非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き」(第1版)を制定しました。(以下、「手引き」と称します。)これは、1年かけて事務局が案をまとめ、田んぼ塾会議で検討のうえ作成したものです。この「手引き」は、第1版と銘うっているとおり宍塚の谷津田での自然農イネ栽培を推進していくための跳躍台の役割を果たすものであり、今後1年1年自然農イネ栽培の経験を重ねていく中で「自然農田んぼ塾」に結集するメンバーの創意工夫によりさらに質の高い使いやすいものにしていくことをねらっています。

 「手引き」の内容を紹介するまえに、私たちが実践している自然農イネ栽培の基本原則について述べます。

  1. 土を耕さない(不耕起) なぜ耕さないかというと耕す必要がないからです。耕していない森や林の土は柔らかくフカフカしています。毎年毎年土の上に木々の落葉落枝が積み重なり、それらの有機物を糧にして生きる小動物や微生物の働きで最終的に無機物にまで分解され、それを植物が吸収して成長する、という循環が繰り返され、肥沃な土壌が形成されます。耕さなければ自ずから植物が健全に育つ生きものの舞台が出来上がります。森や林のような自然界にできるだけ近い環境でイネを栽培することを自然農は目指しています。
  2. 肥料・農薬を用いない(無肥料・無農薬): 自然農では土壌中の生きものの働きによって植物が成長するのに必要な栄養素が作られるので、外部から肥料を投入する必要がありません。ところが土を耕すと、生きものが十分活動できなくなり肥沃な土壌が形成されなくなるため、肥料を入れる必要が出てきます。そして生きものの働きが低下するとともに生きものの間の「食う食われる」という関係のバランスが崩れると、作物に病虫害が発生しやすくなります。そのため農薬をまいて害虫や病原菌を殺すことになります。農薬を使うようになると、害虫の天敵である益虫や病原菌を食べていた生きものまで殺してしまうので害虫や病原菌が異常繁殖したり、農薬の効き目がなくなってきて更に強力な農薬を使わないといけなくなるという悪循環に陥ります。自然農では、そもそもこういう悪循環は起こりません。
  3. 草や虫・微生物を敵とせず、生きものの力を活かす: 自然農の田んぼでは、イネとイネ以外の生きものは敵対関係でなく共生関係にあります。もちろんイネが草の勢いに負けそうな場合は草の生長を抑えますが、必要以上に刈る必要はありません。イネのまわりに草々があることで風雨や暑さ寒さや乾燥から守られたり虫害から守られたりします。また刈った草はその場に寝かせます。土を裸にせず、太陽の日差しにさらさないことから乾燥から守られると同時に、虫や微生物の営みが活発となり肥沃な土壌ができあがります。また多様な生きものがつくりあげる生態系の精巧なバランスを保つことによって病虫害がほとんど発生しない健全なイネが育ちます。
  4. 田んぼ全面に水を張らない(非湛水): 私たちの自然農の田んぼでは、所々に切ってある溝にだけ水を入れてイネを栽培する領域は水を張らず湿った状態を保ちます。こうすることによって、湛水する場合に比べて田んぼの生きものがはるかに多様になります。というのは水生と陸生の両方の動植物、そして好気性と嫌気性の両方の微生物が活動できるためです。こうして多様な生きものとともにイネは健康でたくましく育ちます。また必要とする水の量がはるかに少なくてすみ、水資源の節約になり夏場の水不足の影響を小さくできます。他に、非湛水とすることによって、地中に酸素が入るので根が強くなる、また温暖化係数が二酸化炭素の28倍という強力な温室効果をもつメタンガスの発生が大幅に減る、というメリットがあります。

 次に「手引き」の概要を説明します。 

[1]の『本手引き作成の目的』では、「川口由一氏が30数年の実践を通して作り上げた自然農イネ栽培法は、人類が多様な生きものと共存共生して持続的に生きていくためになくてはならない農法であり、一人でも多くの人々がこの農法に取り組むために必要な具体的な情報を提供することを目的とする」と謳っています。

[2]の『非湛水型不耕起イネ栽培のための田んぼ作りについて』では、具体的な田んぼの作り方・構造、そしてこの農法で重要な役割を果たす有機物たい積層および溝の働きについて述べています。

[3]の『不耕起自然農イネ栽培の湛水型に比べて非湛水型が優れている点』では、湛水型の不耕起イネ栽培に比べて、非湛水の本方式のほうが

  1. より多様な生きものが棲息できる、
  2. 気候変動に対して抵抗力がある、
  3. 水資源が節約できる、
  4. 作業性が向上する、

という4点で優れていることを挙げています。

[4]の『非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手順・方法』では、

  1. 苗代作り、
  2. 種まきに向けた準備、
  3. 種まきおよび種まき後の処置、
  4. 発芽までの処置、
  5. 育苗、
  6. 田植えに向けた準備、
  7. 田植え、
  8. 田植え後の欠株補植・浮き苗補正、
  9. 田植え後の抑草、
  10. 出穂期前後(穂ばらみ期から穂ぞろい期の間)およびその後の水位調節、
  11. イネの生育調査、
  12. 田んぼへの水流入停止、田んぼからの落水、
  13. 1株当り平均有効分げつ数、1穂当り平均モミ数、登熟歩合の計数・記録、
  14. 自家採取種モミに必要な稲株の確保、
  15. 稲刈り、ハザかけ、雨よけ用ビニールカバーかけ、
  16. 脱穀、唐箕(とうみ)、モミすり、稲わらの田んぼへの還元、
  17. 反当り収量を決める構成要素についての考察、
  18. 自家採取種モミ用稲株の刈取り、天日干し、脱穀、モミの調整、

という18項目にわたる作業の目的・手順・方法などを時系列的に述べています。
 ここでは、経験や勘といった記憶や感覚に頼るのではなく、イネの生育過程および結果をなるべくデータとして記録に残しそれに基づいて判断する、という姿勢で書いています。


[5]の『年間の作業スケジュール』では、3月から12月までの作業内容をタイム・テーブルにまとめています。

 最後に、「手引き」の作成にあたって参考にした文献をあげています。

 手引きについては、以下をクリックして、ファイルを開いてください。 

非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き」(第1版)




非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き ( 第1版 )

 非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き(第1版)については、以下をクリックしてファイルを開いてください。

非湛水型不耕起自然農イネ栽培の手引き(第1版)